立正大学公開講座も早、折り返しの第三回目。
毎度毎度、異なる角度から知的好奇心を刺激してくる公開講座。

こんなものを無料で受講できることに喜びを感じる。

さて、今夜のゲストは?

ゲスト

本日のゲストはバイリンガルの舞台俳優である岩崎Mark雄大さん、対談の相手はイギリス文学を専門とする立正大学の伊澤高志先生
前回に引き続き、舞台俳優という表現者と文学の解釈者のタッグを日本古典から、イギリス古典へ拡張しようという試みだ

紹介が終わるや否や、度肝を抜かれる。

なんとマイクなし、地声で講演を行うというのだ。さすがの舞台俳優の気合に期待が高まる。

弱強五歩格言:シェイクスピアの特徴的なリズム

今回のメインテーマは演劇、言葉を体にどう載せて表現するか?ということがメインテーマだ。
講義は詞を通して劇を表現することを追求したといわれる、シェイクスピアを主軸に展開していった。

初手からセリフの読み方についての定石が二点解説された。

一つは弱強五歩格

これは、一文の中に存在する音節に注目し発声に弱→強のアクセントをつけるという形式
(下画像一行目の↗部分)

なんと生声で弱強五歩格を演じてくれるではないか!
なるほど、この方式で呼んだセリフは一言でいえばなんか演劇っぽい

なんというかこう、このアクセントの波があることで観客に迫力が質量をもって押し寄せてくる感じだ。


ここにもう一つ、一文=一息というルールが付加される。

例えば上画像黒□部分(Two of the fairest~till they return)は三行分あるわけだ。
※文の意味は後ほど笑
これらを一息で行く!つもりで気持ちの高まりを表すということだ。
(実際はカンマやセミコロン時点で、カンニングブレスで息継ぎをを行う)



もう一つ別の例、下記画像下から三行目(Nor arm~other name)部においては
弱強のセットは四つで8音節しかない。

残りの一拍は?

間をとって溜めを作るのだという、、、
加速で熱を作り、減速で深みを作る。

心の機微を音だけでここまで表現できると知るこの瞬間、興奮が収まらない。


ほぉむ。実に面白い。
演劇やミュージカルを見たことは何度かあったが、セリフを構造的に解釈したことはなかった。


弱強の5セット、つまり一文の中には10音節が含まれる。
この10音節を基本のまとまりとしつつ、音節の多寡一文のつながり(息の持続時間に伴うテンポ感の変化)で心の様相を表現しようというわけか。

俳優が空間にセットを作り出す

話はさらに、舞台を観客にどう見せるか?という話へ進んでいく。

そうシェイクスピアがこの劇を書いた当時は、たいそうな舞台セット、照明、派手なエフェクトなどなかったのである。
その制約下でどう、演出を作るかという話だ。

先ほどの「Two of the fairest~」の部分が「大空で一番美しい~」に当たる。
大空の星をジュリエットの目に見立て、ディズニー的な展開を妄想しながら恋心を表現するセリフだ。

この恋焦がれる気持ちを臨場感をもって伝えるために舞台を奥行のある立体空間として表現する。
顔は観客の方を向きながら、手は右斜め上方を指して星を演出するのだ。

セットはないが、まるでそこにあるかのように振る舞うというわけだ。




また一つ演出という観点で、、、
心の中の取り扱い方はとても面白いと思った。


下記画像(独白)とマークしてある部分はジュリエットの心の中で考えていることである。
演劇ではこの部分も観客に語りかけるようにしゃべるのだと岩崎さんはおっしゃっていた。

そうしてもいい理由というか、裏設定としては
舞台上にいる俳優の心の中は会場にいる人の後ろに後ろにまで領域展開されているというのだ。
(画像右)


この設定がめちゃめちゃ面白いのは、観客に聞こえている独白は舞台俳優同士でも聞こえるということだ。

つまり?

ジュリエットの秘密の独白は、独白のはずだがロミオに筒抜けということだ!

ロミオの「その言葉どおりに受け取ろう(盗聴)」
ジュリエットの「あなたは誰?(驚き)」はそういうことだ

素人ながらに演出か、、とぼんやりと考えていた。
例えばこのシーン、映画だったら俳優の口元を動かさずに天からの声的に音声を流せば独白にはなる。
現代だったら舞台だとしても、俳優を沈黙させて字幕を使うという手もあるだろう。

一つのことを表現するために様々な演出があるということに改めて気付く。

考え事をリズムで表せ!

こちらは演目、ハムレットより。主人公ハムレットの盛大な独白(筒抜け)だ。
文の意味というよりは音節の数と勢いの関係をつかむための例だ。

()内に書いてある音節数を見れば。
10-11音節の連続、間に挟まる8音節は一時停止。

そしてまた連なる10-11音節。

この音のリズムの流れで、考え事のリズムも表現していることがよくわかるという。


日常会話においては一文をひとまとまりとしてしゃべることが多い。

くわえてえここまでアクセントをつけて発音することはほとんどないと思う。
演劇独特の発声はこのリズム感からきていたのかな?と少し納得。

総括

音節とリズム、そこにニュアンスを載せる。


岩崎さんが、今回の教材の日本語訳として使用された訳文を作った松岡和子さんの言葉を紹介していたがこれが特に印象的だった。
文にはいくつかの意味がある。(音的な感覚、形式的な意味、表現上の意味)。これらを別の言語ですべて対応させながら翻訳することは不可能だという。

首を縦に振っても振り切れない納得感。

英語の教科書の日本語直訳に違和感あること、
ラプンツェルの劇中歌で英語版での歌に比べ、日本語版の歌の情報量が圧倒的に少ないこと。

意味をとれば音的な感覚が崩れ、音感をそろえると意味が欠落するというのは感覚的に大変同意できるものだった。

あ、あと、私一応英語は理解できるつもりでいたのですが、
古典英語はシンプルに何言ってんのかそのまま聞いても意味わからないですね~
(動詞の使い方とか省略形が違うところが特に、、、)

さぁ、残り授業も少なくなってきましたが修了めざして頑張っていきましょう!


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